「心の拠り所」カンプノウの灯火 メッシになれなかった少年たち

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以前から気になっていた豊福晋さん著「カンプノウの灯火」を読み終えました。

 

副題からも分かる通りメッシとカンテラで共に凌ぎを削っていた当時のチームメイトたちの回想録で、現在国内さまざまな場所に散らばった彼らの話を挟みつつ当時を振り返る一冊。

 

 

全7章から構成されているが、途中当時の指導者の話やマシア寮長の回顧、そして故人ヨハンクライフが近年のバルサについて生前に語った談話なども含まれている。短いながら、1つ1つの言葉に想いが込められているのがよくわかり、カンテラあってのバルサだ!というのはむしろ大人たちの言葉からひしひし伝わってくるものがあった。

 

今の自分にとって印象的だったのは第三章「バディ・ロペスを探して」と第五章「フランク兄弟、心の祖国」の2つ。後者はカタルーニャ州独立問題をどう捉えているのか把握する上で非常に分かりやすかった。INDEPENDENCE CHANTが特定の決まった時間に行われていることは初耳で、豊福さんの補足も現地在住ならではだなと。個人的に著者の文は安定しているというか、僕にはとても親しみを感じるので読みやすいです。普段Yahoo!やNumberに寄稿しているコラムも同様に。

本当は前者のバディロペスについて書き記しておきたいことがある筈なんだけど、ちょっとまとまりそうもないので今回はスルー。ただボリュームからしてもここがメインかなぁと。スペインと中東って地図上だと結構距離があるように思えるんだけど…

 

ふと本書を読んでいて思ったことがあるので最後に書き留めておきたい。

最近ふとした瞬間に自分がサッカーを楽しんでいた頃のことを思い出すことがある。何があんなに楽しかったのかと。そして何がきっかけで面白く無くなってしまったのかと。ほんの些細な出来事が原因になってしったのかもしれないが、結局居場所を失ってしまったこと。その結果、後悔することになってしまったこと。

僕にとってはそういう心地好かった頃の思い出が心の拠り所だったりするんですが、本書に出てくるカンテラ育ちの彼らにとってバルサやマシアでの生活はまさにそのようなものであり、今ではメッシがその象徴なのではないかなと考えたりしています。